銅の融点は何度?密度・比重など主要金属の物性データを一覧で徹底比較

こんにちは。「銅加工.com」を運営する株式会社ハタメタルワークス、代表の畑です。
「銅の融点は何度ですか」というご質問は、図面を引く方からも、学校の課題で調べている方からも本当によくいただきます。ところが実際に調べてみると、1083℃と書いてある資料もあれば、1084.62℃と小数点以下まで載せている資料もあり、どれを採用すればいいのか迷った経験のある方もいるのではないでしょうか。
先に答えをまとめておきます。実務で使うなら、純銅の融点は約1085℃、密度は8.93〜8.96g/cm³、比重はおおむね8.9です。資料による表記の違いは1.6℃ほどで、材料検討の段階で判断が変わるような差ではありません。
この記事では、銅の融点・密度・比重をまとめて確認できるように主要金属の一覧表を用意しました。あわせて、資料によって数値が違う理由、比重と密度の使い分け、そしてこれらの物性が実際の加工現場でどう効いてくるのかまで、1935年から銅加工を専業にしてきた立場で整理します。
目次
銅の融点は何度?押さえておきたい3つの値
銅の融点として目にする数値は、大きく3つに整理できます。
実務で扱うなら「約1085℃」。温度の国際的な基準である1990年国際温度目盛(ITS-90)では、銅の凝固点が1084.62℃と定められています。そして日本銅センターが伸銅品データブックから抜粋している純銅の物理的性質では、1083℃と記載されています。
両者の差は約1.6℃、割合にすると約0.15%です。溶解炉の設定や材質選定の判断がこの差で変わることはまずないので、一般的な材料検討では「約1085℃」と覚えておけば十分でしょう。
資料によって銅の融点の数値が違う理由
1084.62℃という値は、ITS-90における温度の定義定点のひとつです。産業技術総合研究所の解説によれば、ITS-90の定義定点のうち最高温度にあたるのが銅の凝固点1084.62℃で、これより高い温度域の定点を実現する研究が各国で続けられてきました。銅がこの役割を担っているのは、高純度の銅が安定して入手でき、凝固する温度の再現性が高いためです。温度計を校正するときの「ものさしの目盛り」として使われている、と考えるとイメージしやすいかもしれません。
一方、工業向けのデータブックでは1083℃という値が使われてきました。ただし、今回確認した出典の範囲では、この差が生じた経緯までは特定できません。測定の時期や採用したデータの出どころが違うのだろう、という以上のことは言えないのが正直なところです。
したがって、精度が問われる温度計測の分野では1084.62℃、材料選定や加工条件の検討では「約1085℃」。この使い分けで実務に支障はありません。
出典:光温度計測研究グループ|国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター
純銅の主な物性データ一覧
融点だけでなく、周辺の数値もまとめて見ておきましょう。日本銅センターが公開している純銅の物理的性質は以下のとおりです。
| 性質 | 数値 |
|---|---|
| 原子番号 | 29 |
| 密度(20℃) | 8.93 Mg/m³(=8.93g/cm³) |
| 融点 | 1083℃ |
| 沸点 | 2582℃ |
| 比熱(20℃) | 385 J/(kg・K) |
| 熱伝導率(20℃) | 394 W/(m・K) |
| 線膨張係数(20〜100℃) | 17.1×10⁻⁶/K |
| 導電率(20℃) | 102 %IACS |
※純度の高い純銅の値です。JISに規定された各種の銅および銅合金は、それぞれ規定された性質を持ちます。線膨張係数は温度域によって変わり、同資料では20〜200℃で17.2、20〜500℃で18.3とされています。
ときどきいただくのが「銅鍋を火にかけても溶けないのはなぜか」という質問です。答えは、炎の温度と鍋そのものの温度が同じではないからです。炎から鍋へ伝わる熱には限りがあり、同時に周囲への放熱や水・食材への熱移動も起こります。さらに銅は熱伝導率394W/(m・K)と熱を通しやすく、一部に加わった熱が全体へ広がりやすいため、通常の調理条件で鍋が融点に達することはありません。
この「熱が溜まりにくい」という性質は、あとで触れるように加工の現場では扱いにくさとして表れます。
出典:銅について知る:物理的性質・機械的性質|一般社団法人日本銅センター
主要金属の融点を一覧で比較
銅の位置づけをつかむには、他の金属と並べて見るのが早道です。代表的な金属の融点を、高い順に並べました。
| 金属 | 元素記号 | 融点(℃) |
|---|---|---|
| タングステン | W | 約3400 |
| モリブデン | Mo | 約2620 |
| 白金 | Pt | 約1770 |
| チタン | Ti | 約1670 |
| 鉄 | Fe | 約1540 |
| ニッケル | Ni | 約1455 |
| ステンレス(SUS304) | ― | 約1400〜1450 |
| 銅 | Cu | 約1085 |
| 金 | Au | 約1064 |
| 銀 | Ag | 約962 |
| 黄銅(真鍮) | ― | 約900〜1000 |
| アルミニウム | Al | 約660 |
| 亜鉛 | Zn | 約420 |
| 鉛 | Pb | 約328 |
| スズ | Sn | 約232 |
※純金属の値は標準大気圧下での代表値です。ステンレスや黄銅は合金のため単一の融点ではなく、溶け始めてから完全に液体になるまでの融解温度範囲の目安を示しています。実際の材質では規格や成分により数値が異なります。
こうして並べると、銅は「金属のなかでは中位よりやや上」という位置にあることがわかります。金や銀よりわずかに高く、鉄やニッケルよりは低い。タングステンやモリブデンのように2000℃を超える耐火金属とは、扱う設備からして別世界です。
ここで注意したいのは、「融点が高いほど高温部品に向く」と単純には言えない点です。ジェットエンジンやガスタービンの部品には、融点の高さだけでなく高温での強度、長時間の荷重に耐えるクリープ特性、酸化や腐食への強さが求められます。物質・材料研究機構(NIMS)の解説でも、超合金の開発ではクリープ試験に加えて耐酸化試験や耐腐食試験を行い、実際に必要な耐熱強度を備えているか確認すると説明されています。融点は判断材料のひとつにすぎない、というのが実情です。
逆に、融点が低いことが役目になっている金属もあります。スズや鉛がはんだに使われるのは、低い温度で溶けることそのものに価値があるからです。
出典:コラム「超合金」|国立研究開発法人 物質・材料研究機構
銅の密度・比重は?主要金属との比較
銅の密度は8.93〜8.96g/cm³、比重はおおむね8.9です。水の約9倍の重さと考えると、手に取ったときの「思ったより重い」という感覚とも一致します。主要な金属を、重い順に並べました。
| 金属 | 元素記号 | 密度(g/cm³) | 比重(概算) |
|---|---|---|---|
| 白金 | Pt | 21.45 | 21.4 |
| 金 | Au | 19.32 | 19.3 |
| タングステン | W | 19.3 | 19.3 |
| 鉛 | Pb | 11.35 | 11.3 |
| 銀 | Ag | 10.50 | 10.5 |
| 銅 | Cu | 8.93〜8.96 | 8.9 |
| ニッケル | Ni | 8.90 | 8.9 |
| 黄銅(C2600〜C2801の目安) | ― | 8.4〜8.5 | 8.4〜8.5 |
| ステンレス(SUS304) | ― | 7.93 | 7.9 |
| 鉄 | Fe | 7.87 | 7.9 |
| スズ | Sn | 7.31 | 7.3 |
| 亜鉛 | Zn | 7.13 | 7.1 |
| チタン | Ti | 4.51 | 4.5 |
| アルミニウム | Al | 2.70 | 2.7 |
| リチウム | Li | 0.53 | 0.5 |
※純金属の密度は室温での代表値です。合金は成分によって数値が動くため、幅または目安として示しています。
銅は鉄より約1.1倍重く、アルミニウムと比べると3倍以上の重さがあります。同じ形状の部品をアルミから銅に置き換えれば、重量はおよそ3.3倍。搬送や取り付けの負担が変わってくる差です。
密度と比重は何が違うのか
数値がほぼ同じなので混同されがちですが、密度と比重は別の量です。
密度は単位体積あたりの質量で、g/cm³やkg/m³といった単位を持ちます。対する比重は、物質の密度を基準となる水の密度で割った無次元の値です。日本原子力研究開発機構の用語説明でも、比重はある物質の密度を水の密度で割った値であり、4℃における水の密度は約1g/cm³と示されています。
つまり、水の密度が約1g/cm³であるために、g/cm³で表した密度の数値と比重の数値がほぼ一致するというだけのことです。「密度8.93g/cm³」と「比重約8.9」は数字こそ近いものの、物理量としては同じではありません。
重量を計算してみる
密度がわかっていれば、材料の重さは体積を掛けるだけで求まります。銅の密度8.93g/cm³で計算してみましょう。
たとえば1000mm×500mm、板厚3mmの銅板であれば、体積は1500cm³。8.93を掛けて約13.4kgとなります。同じ寸法をアルミニウム(密度2.70g/cm³)でつくれば約4.1kgですから、9kg以上の差です。
当社が多く手がけるブスバー(バスバー)でも同じ計算が使えます。断面5mm×20mm、長さ1mの銅ブスバーなら体積は100cm³で、重量は約0.89kg。盤内に何十本と収める設計では、この積み重ねが盤全体の重量や取付金具の選定に直結します。
出典:約400度の温度変化でも超弾性を示す軽量な形状記憶合金を開発(用語説明:比重)|国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構
銅合金では融点も密度も変わる
ここまでは主に純銅の話でした。実際の製品で使われるのは黄銅(真鍮)や青銅といった合金であることも多く、その場合は数値の扱い方が変わります。
まず融点です。合金では添加元素の種類や割合によって固相線・液相線が変化し、多くの場合、溶け始める温度と完全に液体になる温度の間に幅が生じます。純金属のように「何℃」と一点で言い切れないため、実務では材質ごとの固相線・液相線を確認する必要があります。
密度も同様です。黄銅は銅と亜鉛の合金で、亜鉛の密度は7.13g/cm³と銅より軽いため、亜鉛の比率が上がるほど全体は軽くなります。日本伸銅協会と日本銅センターの資料では、丹銅のC2100が銅94.0〜96.0%、黄銅のC2801が59.0〜62.0%と規定されており、主な丹銅・黄銅ではおおむね59〜96%の範囲に収まります。さらに快削黄銅や鉛レス快削黄銅まで含めると、銅含有率が57%程度の規格もあります。
同じ資料では、伸銅品が幅広い分野で使われている理由として、加工性の良さに加え、導電性・熱伝導性・耐食性・ばね性といった特性をバランスよく備えている点が挙げられています。銅が電気部品から屋根材、調理器具まで広がっているのは、融点が中間だからというより、こうした特性の組み合わせによるものです。
厳密な重量計算や加熱条件の検討が必要な場面では「銅だから8.93」と決め打ちせず、扱う材質記号(C1100、C2801など)に対応した値を確認してください。
出典:伸銅品|一般社団法人日本伸銅協会・一般社団法人日本銅センター
ロウ付けで銅の融点が効いてくる場面
物性値は暗記するためのものではなく、加工の判断材料です。融点がもっとも直接的に効いてくるのが、ロウ付けによる接合でしょう。
ロウ付けは、母材である銅を溶かさずに、母材より低い温度で溶けるロウ材だけを溶かして接合する方法です。日本溶接協会の解説では、ロウ材の条件として、ロウの融点が母材より低いこと、母材がロウによってぬれること、そして接合部が機械的性質・電気的性質・耐食性など要求された性質を満たすことが挙げられています。実際にはこれに加えて、加工性や作業性、経済性も選定の要素になります。
つまり「銅より低い温度で溶けるから使える」わけではありません。電気を流す部品であれば接合部の導電性が、屋外で使う部品であれば耐食性が問われます。当社では銀ロウを中心に、部品の用途と要求性能からロウ材と加熱方法を選んでいます。トーチ加熱と高周波誘導加熱では熱の入り方がまったく違うため、形状によって使い分けが必要です。
出典:ろう付に使用されるろう(溶加材)にはどのようなものがありますか|一般社団法人日本溶接協会 溶接情報センター
加熱・熱膨張・重量で押さえておきたい点
融点以外の物性も、加工の現場では日常的に効いてきます。
まず、銅は融点まで熱を上げなくても手前で性質が変わります。日本銅センターのQ&Aでは、銅管を加熱して曲げる場合について、約400℃で機械的性質が大きく変化すると説明されています。バーナーで加熱しながら曲げる業者もありますが、加熱しすぎのリスクがあるため、あらかじめ質別(O材、1/2H材など)で選ぶほうが確実だとされています。「融点まで余裕があるから大丈夫」という発想は通用しません。
熱の逃げやすさも見逃せない点です。熱伝導率394W/(m・K)は、溶接やロウ付けの局面では「加えた熱が一瞬で全体に散る」という意味になります。鉄と同じ感覚で加熱すると狙った部分が温まらず、逆に長く炙りすぎて周囲を傷めることもあります。銅の接合に経験が要ると言われるのは、この性質が理由です。熱伝導率の詳しい比較は材質別の熱伝導率とコスパを解説した記事で、電気の通しやすさについては金属の電気伝導率を比較した記事でそれぞれ扱っています。
膨張と収縮の管理も物性値の話です。線膨張係数は温度域によって変わり、日本銅センターの物性表では20〜100℃で17.1×10⁻⁶/K。この値で計算すると、1mの銅材は温度が60℃上がると約1.0mm伸びます。同センターのQ&Aでは、この伸びは鉄の約1.5倍と説明されています。長尺の部材や配管では、取り付け後の温度変化まで見込んだ設計が必要です。
そして密度は、コストに直結します。同じ形状でも銅はアルミの3倍以上重くなるため、材料費だけでなく輸送費や作業者の負担にも跳ね返ります。軽さを最優先する部位はアルミ、電気と熱を確実に運ぶ部位は銅、と役割で分ける考え方が現実的でしょう。
出典:銅について知る:銅に関するQ&A【熱的・機械的特性】|一般社団法人日本銅センター
まとめ:数値を押さえると材料選びの精度が上がる
銅の融点は約1085℃、密度は8.93〜8.96g/cm³、比重はおおむね8.9。まずはこの3つを押さえておけば、日常的な検討で困ることはありません。資料によって1083℃と1084.62℃に分かれるのは、ITS-90で定義定点として定められた値と、工業データとして流通してきた値の違いによるものです。
そして、これらの数値は単体で意味を持つわけではありません。融点はロウ付けや溶接の条件を決め、密度は重量とコストを決め、熱伝導率は加熱の難易度を左右します。合金になれば数値そのものが変わります。並べて比べられる状態にしておくと、「この部品はどの材質が適しているか」という判断が一段速くなります。
株式会社ハタメタルワークスは、1935年の創業以来90年以上にわたり、銅を中心とした金属加工を専業としてきました。マシニング、プレス、曲げ、ロウ付け、メッキ・絶縁処理まで一貫して対応し、ブスバーをはじめとする電気部品の製作実績を数多く積み重ねています。「この形状は銅で成立するのか」「重量を抑えたいが導電性は落としたくない」といった材質選びの段階からのご相談も歓迎です。銅加工の依頼先をお探しでしたら、お気軽にお問い合わせください。
監修者情報
代表取締役 畑 敬三
株式会社ハタメタルワークスは、産業用電池や車輌機器向けの「銅加工」を専門とし、昭和10年の創業以来「誠実な対応」と「確かな製品」で信頼を築いてきました。迅速な対応により最短翌日納品が可能で、小ロットにも対応します。「小さな一流企業」を目指し、「銅加工ならハタメタルワークス」と評価されるまで成長。今後も独自の価値を提供し続けます。
詳しくはこちら











