メッキ加工の特徴や発注前のポイントを解説
メッキ加工とは、表面処理の方法の一つですが、どのような目的で施工され、どんな種類があるのか分からない方も多いのではないでしょうか。本ページでは、メッキ加工の特徴や目的、発注する際に押さえておくポイントを解説していきます。対象物に適したメッキ加工の方法が分かるので、ぜひ参考にしてみてください。
メッキ加工の特徴と種類
Plating
「メッキ加工」とは?
「メッキ(鍍金)」とは、数ある表面処理の方法の一つで、「めっき」と記載されたり、「ときん」と呼ばれたりする場合もあります。金属や樹脂などの表面に、異なる種類の金属の薄い膜を処理することで、以下の目的を果たすことが可能です。
※表は左右にスクロールして確認することができます
装飾性の向上 | 耐食性の向上 | 機能性の向上 |
---|---|---|
見た目の美しさの向上(金メッキなど) | 腐食や錆びの防止効果の向上(亜鉛メッキなど) | 導電性やはんだ濡れ性などの向上(ニッケルメッキなど) |
「メッキ加工」とは、上記の効果を付与するために、素材に金属を被覆する方法のことを指します。メッキ加工は、日本に仏教とともに伝来し、仏像の表面処理などで多く使われてきた歴史があります。世界中で太古から施工されていたことは分かっていますが、いまだ判明されていないことが多いのも事実です。
メッキ加工の歴史
-
紀元前1500年のメソポタミア文明時代に、錫(すず)メッキ加工が開始
-
紀元前500年頃の中国、古墳時代の日本で、金メッキ加工された青銅器が発見
-
紀元前221年頃の中国で、クロームメッキ加工された青銅製の剣が発見
-
以降、徐々に世界中でメッキ加工が広まる
現代では技術が進歩し、メッキ加工の種類が増え、活用の幅はさらに広がっています。電気機器などの工業製品に、メッキが持つ特性を付与することで、見た目の向上や寿命の延長などの効果が期待されています。
メッキ加工の種類
メッキ加工にはさまざまな種類があり、すべての特徴を把握することは大変難しいです。そこでここからは、代表的なメッキ加工の種類をピックアップし、それぞれの特徴をご紹介します。
ニッケルメッキ加工
ニッケルメッキ加工とは、電気を使用して、金属化合物「ニッケル(Ni)」をメッキ加工する処理のことです。
<ニッケルメッキ加工の特徴>
- 装飾性が高い
- 耐食性が高い
- 耐摩耗性に優れている
- 空気中で変色しやすく、上からクロームメッキ加工を施すことが多い
ニッケルメッキ加工は、大きく分けて、電気を使用する「電解ニッケルメッキ」と電気を使用しない「無電解ニッケルメッキ」の2つに分類されます。しかし一般的に、ニッケルメッキと呼ばれる場合は、電気を使用してメッキ加工する「電解ニッケルメッキ」のことを指しています。
スズメッキ加工
スズメッキ加工とは、素材に「錫(スズ:Sn)」を使用して行うメッキ加工のことです。
<スズメッキ加工の特徴>
- 耐食性が高い
- 食品などに含まれる有機酸に強い
- 融点が低く、はんだ濡れ性に優れている
- 展延性に富んで柔らかい
- 人体への毒性が低い
耐食性の高さや有機酸に対する強さから、食器や電子部品などに使用されるケースが多いメッキ加工です。また、スズ自体、融点が低い(液体になりやすい)性質を持つため、はんだ濡れ性にも優れており、素材の加工性の向上効果も期待できます。
銀メッキ加工
銀メッキ加工とは、素材に「銀(Ag)」を使用して行うメッキ加工のことです。
<銀メッキ加工の特徴>
- 装飾性が高い
- 通電性が高い
- はんだ濡れ性に優れている
- 人体に優しい
- 酸化しやすい
装飾性や通電性の高さを活かし、高級感を演出したいアクセサリーや銀食器などに活用されたり、精密機器のコネクター部分などに使用されたりと幅広く施工されています。ただし、酸化しやすく、メッキ加工後に変色を防ぐための処理が必要になる点には注意が必要です。
無電解メッキ加工
無電解メッキ加工とは、電気を使用せずに、化学反応を活用したメッキ加工のことです。メッキに使用する金属が溶けた水溶液に還元剤を入れた際に、化学反応を起こして析出された金属が、素材の表面に付着する原理を利用して加工処理されます。
<無電解メッキ加工の特徴>
- 装飾性が高い
- 耐食性が高い
- 耐摩耗性に優れている
- 硬度が高い
樹脂製のものや複雑な形状のものが対象であってもメッキ加工しやすい点は、ニッケルメッキと大きく異なるポイントです。メッキ加工を行う際、特殊な設備が必要なケースが多く、メッキ専門店でしか処理できない可能性が高い点には注意しなければなりません。
上記4つのメッキ加工は、あくまでも一部に過ぎません。メッキ加工には、以下のように、ほかにもさまざまな種類の方法が存在します。
<その他のメッキ加工の種類>
- 装飾クロームメッキ
- 硬質クロームメッキ
- 亜鉛メッキ
- アルマイト
- 金メッキ など
光沢感の付与に適した「装飾クロームメッキ」、耐食性の向上効果が期待できる「亜鉛メッキ」など、さまざまな種類があるため、対象物や目的に合うメッキ加工の方法を選ぶことが大切です。
メッキ加工の発注前に押さえておくポイント
メッキ加工業者に依頼する際、何も意識せずに発注してしまうと、後悔やトラブルの原因につながる可能性があります。事前に押さえておくポイントをまとめたので、一つずつ確認しておきましょう。
目的の設定 | 対象物の装飾性を高めたいのか、機能性を向上したいのかなど、なぜメッキ加工が必要なのか、目的を明確化しておく |
---|---|
メッキ加工の選定 | 数あるメッキ加工の中から、設定した目的をクリアできる特性を持つ方法を事前に選んでおく |
発注量と納期 | 余計なコストや時間をかけないために、ロット数や個数、kg数、いつまでの納期なのかを事前に確認し伝えておく |
メッキ膜厚や仕上げ寸法の設定 | 理想に近づけるために、メッキ膜厚(メッキ皮膜の厚さ)や測定箇所、ばらつきの許容範囲などを細かく設定しておく |
仕上げ状態の設定 | 光沢や半光沢、つや消し、バフ研磨、ヘアライン仕上げ、特殊仕上げなど、完成後をイメージして設定しておく |
材質チェック | 材質によっては、メッキに悪影響を与える可能性があるため、成分や焼き入れなどの熱加工品でないかなどを事前に確認しておく |
形状チェック | エアーや液抜きの穴の有無、治具に取り付けられるものか、液がしみこむ構造かなど、形状に問題がないかを事前に確認しておく |
業者への発注前に、上記のポイントをできるだけ細かく設定・確認しておくことで、理想に近いメッキ加工が実現しやすくなるはずです。
「絶縁処理」
は事故防止にも役立つ
Insulation
絶縁処理の必要性について
電気工事の際は周囲の電気を止めることが一般的ですが、抜け道のように電気が通過すると事故につながる可能性があります。絶縁処理は、感電やショートなどの重大なトラブルを予防するために重要です。
導体・半導体・絶縁体とはどう違うのか
絶縁処理に関連する物質が3つあります。それぞれの違いを把握して、銅などの金属製品に適切な絶縁処理を行いましょう。
※表は左右にスクロールして確認することができます
導体 | 半導体 | 絶縁体 |
---|---|---|
銅、金、銀、アルミニウムのように、電気をよく通す物質が導体です。自由電子の数が多いため、ケーブルの心線などに利用されています。 | 導体と絶縁体の特徴を兼ねた物質が半導体です。代表的な物質としては「シリコン」があり、温度によって絶縁性能が変わることが特徴といえます。 | ゴムやガラスのように、電気を通さない物質が絶縁体です。極端なほど高い電圧が加わらない限りは電子を動かさないため、回路の絶縁処理などに用いられています。 |
電気伝導性が高い銅には絶縁処理を施す
お伝えしているとおり、銅は電気伝導性が高い金属です。製品の安全性を高めるためには、以下のようなアイテムを用いた絶縁処理を行うことが推奨されます。
<銅の絶縁処理に使うアイテム>
- テープ(塩ビ、アセテート、ガラスなど)
- チューブ(塩ビ、ポリオレフィンなど)
- コーティング(塩ビ、ナイロン、エポキシなど)
状況や用途に合わせて的確なアイテムを選ぶことが重要です。
PICK UP
銅加工.comは銅の専門家!
ノウハウを生かした
各種絶縁処理が可能
銅加工.comを運営する株式会社ハタメタルワークスは、80年以上にわたり「銅」を扱い続けてきた素材の専門家です。耐久性・安全性を高めるための各種絶縁処理を、短納期・高品質・ローコストの3拍子をそろえてご提供いたします。