無酸素銅の魅力と特性―純銅や他の銅素材とどう違う?
銅像や十円玉など、銅は元々私たちにとって非常に身近な金属ですが、導電率、熱伝導率が高いこと、切削性に優れていることから、様々な部品に加工されている素材でもあります。
銅は純銅と主原料の銅に他の金属を添加した銅合金に大きく分けられており、さらに純銅は「無酸素銅」、「タフピッチ銅」、「りん脱酸銅」に分けられています。
今回は、無酸素銅にスポットを当て、銅加工のプロフェッショナルの視点から見た特徴についてお話ししたいと思います
無酸素銅の特性とは?
まず無酸素銅にはどのような特性があるのか見ていきましょう。
●純度が高い
無酸素銅は純度が99.96%以上の純銅で、添加元素がほとんどありません。それが熱伝導性、導電性を非常に優れたものにしているだけでなく、「加工のしやすさ」という特性をもたらしています。
●酸素含有量が少ない
名前のとおり、酸素の含有量が極めて少ないのが「無酸素銅」の特徴です。酸素の量は0.001%~0.005%程度しかありません。
●「水素脆化」の心配がない
これは上記の酸素含有量の少なさと大きく関係しています。
金属材料には水素を吸収することで靭性が低下して脆くなってしまう「水素脆化」という現象があります。
金属が水素脆化するとブローホールや割れが起きる恐れがありますが、無酸素銅は酸素含有量が少ないためこの現象が生じません。
ここが「タフピッチ銅」との大きな違いです。
この「水素脆化」というデメリットを克服するために「脱酸」処理を施したものが「脱酸銅」で、その際に「りん」を利用したものを「りん脱酸銅」と言います。水素脆化の心配がない点は無酸素銅と同じですが、導電性では無酸素銅に軍配があがります。
無酸素銅の魅力は?
では、無酸素銅が持つ魅力とはどのようなものなのでしょうか。
●加工しやすい
「柔らかく加工がしやすい」というのがまず挙げられる魅力の一つではないでしょうか。
たしかに「柔らかい」ということは「タフピッチ銅」、「りん脱酸銅」に比べて「強度が劣る」ということでもあります。
しかし、曲げ加工、絞り加工、切削加工といった複雑な加工が可能なため、ブスバーや放熱板などで特殊な形状を作る場合に選ばれることが多いです。
これは、強度の弱さというデメリットを十分に打ち消すことができるメリットです。
●高温に加熱しても問題が生じない
「水素脆化」が生じるとなんの前触れもなく突然金属材料が破断することがあり、大きなトラブルの原因になります。
無酸素銅にはこの「水素脆化」の心配がなく、高温に加熱しても問題がありません。
そのため、溶接やろう付けを必要とする部品に使用することが可能です。
●熱伝導率、電気伝導率が高い
熱伝導率の高さは純アルミニウムや純チタンのなんと10倍以上です。
電気伝導率も高いため、低温環境で使用される熱交換機や真空機器の部品としても重宝されています。
以上の特徴から無酸素銅は電気機器、ブスバー、熱交換器、ガスケット、ヒートスプレッダー、さらにはパワー半導体の基板など、様々な分野の製品に幅広く利用されています。私たちの暮らしをしっかりと支えてくれているのです。
まとめ
こちらでは「銅加工.com」を運営している株式会社ハタメタルワークスが、純銅の一種である無酸素銅についてお話ししてきました。
無酸素銅は水素脆化の心配がなく、高温の加熱にも耐えられ、熱伝導率も高いという優れた性質がおわかりいただけたと思います。
当社は銅加工のプロフェッショナルとしての豊富な知識と銅を様々な部品へと変えていく優れた加工技術を誇りとしています。お客様のニーズに合う加工製品をご提供しますので、お気軽にご相談ください。
監修者情報
代表取締役 畑 敬三
株式会社ハタメタルワークスは、産業用電池や車輌機器向けの「銅加工」を専門とし、昭和10年の創業以来「誠実な対応」と「確かな製品」で信頼を築いてきました。迅速な対応により最短翌日納品が可能で、小ロットにも対応します。「小さな一流企業」を目指し、「銅加工ならハタメタルワークス」と評価されるまで成長。今後も独自の価値を提供し続けます。
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