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ステンレスはなぜ錆びない?それでも錆びる原因と防ぐコツをプロが解説

ステンレスはなぜ錆びない?それでも錆びる原因と防ぐコツをプロが解説

ステンレスはなぜ錆びない?それでも錆びる原因と防ぐコツをプロが解説

こんにちは。「銅加工.com」を運営する株式会社ハタメタルワークス、代表の畑です。

キッチンのシンクや水筒、屋外の手すりなど、ステンレス製品はどれも「錆びないから安心」と思って選んだはずです。それなのに、いつの間にか茶色い点が浮いていた——そんな経験をお持ちの方は少なくないでしょう。

先に結論をお伝えします。ステンレスは「錆びない金属」ではなく「錆びにくい金属」です。表面にある不動態皮膜という目に見えない膜が鉄を守っているだけで、この膜が壊れる条件がそろえば錆びます。裏を返せば、膜を壊さない使い方さえ知っていれば、錆はかなりの確率で防げるということでもあります。

この記事では、ステンレスが錆びにくい理由から、それでも錆びてしまう具体的な原因、日々の予防と錆びたときの対処までを、金属加工を専門にしてきた立場から順に整理します。

 

ステンレスはなぜ錆びにくい?不動態皮膜の仕組み

ステンレスは、鉄にクロムを加えた合金鋼です。国際規格では、クロムを10.5%以上含み、炭素は1.2%以下とされています。名前の由来である英語のstainless steelも、「錆びにくい鋼」という意味です。

錆びにくさを生んでいるのは、このクロムです。クロムは鉄よりも酸素と結びつきやすく、空気に触れると表面で真っ先に酸素と反応して、ごく薄い保護膜をつくります。これが不動態皮膜と呼ばれるもので、内部の鉄と外気を遮断し、鉄が酸化して赤錆になるのを食い止めています。

この膜には、知っておくと役に立つ性質が二つあります。ひとつは、厚さが100万分の3mm程度と極端に薄いこと。目には見えず、手で触れても存在を感じることはできません。もうひとつは、傷ついても周囲に酸素があれば自動的に再生することです。包丁で切ったり、たわしでこすったりして膜が削れても、空気に触れているかぎり短時間で張り直されます。ステンレスが長く使い続けられるのは、この自己修復のおかげです。

ここで注目したいのが、「酸素があれば」という条件です。裏返せば、酸素が届かない場所や、再生が追いつかないほど激しく攻撃される環境では、膜は元に戻れません。ステンレスの腐食は、この不動態皮膜を形成・維持できなくなったときに起こります。ただし、その引き金は酸素不足だけではありません。塩化物イオン、酸性の環境、温度、狭い隙間、溶接熱の影響など、複数の要因が単独あるいは重なって働きます。

なお、ステンレスの定義や種類ごとの違いといった基礎知識については、ステンレスとは?種類や特徴の基礎解説で詳しく扱っています。本記事では錆に絞って読み進めてください。

出典:特長|ステンレス協会

 

それでもステンレスが錆びる主な原因

ステンレス協会も、ステンレス鋼は金や白金と違って絶対に錆びない金属ではなく、環境や使い方によっては腐食すると明記しています。実際の現場で起きている錆は、原因を追っていくと数パターンに整理できます。

もらい錆(他の金属の錆の付着)

もっとも多いのが、もらい錆です。ステンレス自身が錆びたのではなく、外から来た鉄が錆びて、その錆が表面に貼り付いてしまう現象を指します。

きっかけは日常に転がっています。シンクに空き缶を置いたまま一晩越した、濡れたヘアピンを洗面台に放置した、鉄製のフライパンとステンレス鍋を重ねて水切りかごに入れた——こうした場面で、鉄側から出た錆がステンレスに移ります。工場や建設現場では、鉄を切断したときに飛んだ研削粉がステンレス面に降り積もり、雨に濡れて点々と錆が浮くケースがよくあります。

厄介なのは、放っておくと本当にステンレス自身の錆へ進んでしまう点です。付着した錆が水分を抱え込み、その真下では酸素が届かなくなるため、不動態皮膜が再生できなくなります。もらい錆は「見た目の汚れ」で済むうちに落とすのが鉄則です。

孔食(塩化物イオンによる局部腐食)

もうひとつが孔食(こうしょく)です。主に塩化物イオンなどのハロゲン系イオンによって不動態皮膜が局部的に破壊され、その部分から針で刺したように深く腐食が進む現象を指します。

表面の見た目はごく小さな点でも、内部では思いのほか進行していることがあります。表面積が広い全面腐食と違い、狭い一点に腐食が集中するためです。薄い板であれば、最終的に穴が開くこともあります。

孔食が起きやすい環境ははっきりしています。海沿いの地域は、海水由来の塩分を含んだ微粒子が空気中を漂っているため、屋外のステンレスに塩分が付着し続けます。家庭では、しょうゆや漬物の汁を拭き取らずに放置すること、融雪剤が付いたまま洗い流さないことなどが引き金になります。塩素系の洗浄剤や漂白剤も、使用条件によっては腐食の原因になります。

対策の方向性も、この仕組みから導けます。塩化物イオンの濃度を下げる、温度を下げる、隙間構造をなくす、そしてクロムやモリブデンを多く含む耐食性に優れた鋼種を選ぶ、といった手立てが有効です。

出典:ステンレスの耐食性と腐食現象について|ステンレス協会

見落とされやすい原因(隙間腐食・溶接部の焼け)

上の二つほど知られていませんが、実務では次の二つも頻繁に起きます。

ひとつは隙間腐食です。パッキンの下、板を重ね合わせた合わせ目、ボルトの座面の裏など、水分は入り込むのに空気が通わない狭い隙間では、不動態皮膜が再生できずに腐食が進みます。設計段階で水が抜ける形にしておくかどうかで、寿命が大きく変わる部分です。

もうひとつが溶接部の焼けです。溶接すると、その周辺には酸化スケールと呼ばれる変色層ができます。この状態では不動態皮膜が十分に形成されず、耐食性が落ちます。だからこそ溶接後は、変色部をペーパーやブラシで機械的に除去するか、酸洗いで落とす処理が推奨されています。この処理が不十分なまま屋外や水がかりのある場所で使うと、溶接線に沿って錆が現れることがあります。

出典:ステンレス溶接の施工方法とその後の手入れについて|ステンレス協会

 

錆びさせないための日常のコツ

原因がわかれば、対策はそのまま裏返しになります。難しい道具は要りません。

最初にお伝えしたいのは、水分を残さないことです。水滴そのものが錆の原因になるわけではありませんが、水に溶けた塩分や不純物は乾いたあと表面に残り、そこが起点になります。シンクや水筒は、使い終わったら軽くでも拭き上げておくと状態が目に見えて変わります。

次に、塩分や洗剤を残さないこと。しょうゆや酢、梅干しなど塩分の多いものが付いたら早めに洗い流し、洗剤を使ったあとは十分に水で流します。塩素系漂白剤については、ステンレス製品によって使用の可否が分かれます。使用を認めているメーカーもあれば、シンクへの使用を避けるよう案内しているメーカーもあるため、漂白剤と製品の双方の取扱説明書に従ってください。使える場合も、指定された濃度と時間を守り、使用後は成分が残らないよう十分に洗い流すことが必要です。

三つめは、鉄粉を付着させたり、濡れた鉄製品を長時間接触させたりしないことです。ステンレス製のシンクや作業台に、濡れた包丁や空き缶を置きっぱなしにしないだけで、もらい錆はかなり避けられます。ステンレスを磨くときに鉄用のたわしを使わないのも同じ理由で、鉄粉が残ってしまうためです。

最後に、屋外で使うものは定期的に真水で洗い流すこと。海沿いや幹線道路沿いでは、塩分や汚染物質が表面に蓄積していきます。付着したこれらを洗い流すことは腐食リスクの低減に有効です。必要な頻度は立地や雨が当たるかどうかによって変わり、雨で洗われる面より、庇の下など汚れが溜まりやすい箇所のほうが回数を増やす必要があります。海浜地域や工業地域では、さらにこまめな清掃が求められます。

出典:キッチンのステンレスシンクが錆びた|LIXIL

日常のお手入れ方法をもう少し具体的に知りたい方は、ステンレス製品の正しいお手入れ方法もあわせてご覧ください。

 

錆びてしまったときの対処

すでに錆が出ている場合は、程度によって手当てを変えます。ステンレス協会が示す手順は段階的で、弱い方法から順に試すのが基本です。

もらい錆の初期や、しみ程度の軽い錆であれば、ステンレス表面自体はほとんど傷んでいません。この段階なら、初期の錆や汚れ向けの市販清掃剤で、ほとんど元通りの表面に戻せる場合があります。中性洗剤で落ちない場合も、まずはこのレベルの薬剤から試してください。

ただし、家庭用のシンクや水筒などは、表面にコーティングが施されていたり、食品が触れる部分だったりと条件が異なります。使える洗剤や研磨剤は製品ごとに指定されているため、メーカーの取扱説明書を優先してください。粉末クレンザーや金属たわしを禁じている製品も少なくありません。

放置して茶褐色の厚い赤錆になってしまうと、手間が一段上がります。ひどい赤錆用の薬剤が必要になり、それでも落ちない場合は、サンドペーパーやステンレスブラシで錆をある程度こすり落としてから薬剤を使うことになります。ただし、この方法では表面に擦り傷が残るのは避けられません。仕上がりの見た目を求める箇所では、清掃後に研磨をやり直す作業が発生します。鏡面やヘアラインの再仕上げについてはステンレス研磨と鏡面仕上げの基本で解説しています。

作業のときは、いきなり全面に取りかからず、目立たない部分で試して効果と影響を確かめてください。薬剤を使ったあとは必ず十分に水洗いし、水気を拭き取って乾かします。薬剤が残ったままでは、それ自体が次の腐食の原因になりかねません。

出典:ステンレス建材の手入れ方法について|ステンレス協会

 

用途に応じた種類選びの考え方

そもそも環境に合わない鋼種を選んでいると、どれだけ手入れをしても錆は出ます。ステンレスにはJIS規格だけで100種類以上の鋼種があり、耐食性にも差があります。代表的なものを押さえておくと、選び方の見当がつきやすくなります。

もっとも広く使われているのがオーステナイト系で、18クロム・8ニッケルのSUS304が代表格です。オーステナイト系は耐食性、加工性、溶接性に優れ、系統全体でステンレス生産量の60%を超えます。用途に迷ったらまず候補になる鋼種と考えて差し支えありません。

価格を抑えたい場面で使われるのがフェライト系で、18クロムのSUS430が代表です。ニッケルを主要な添加元素としないため、ニッケルを多く含むオーステナイト系より原料コストを抑えやすく、厨房用品や建築内装、家電部品などに広く使われています。一般的な耐食用としては十分ですが、水回りや屋外では、条件によってSUS304より錆が出やすくなります。

塩分にさらされる環境では、SUS316が選ばれます。SUS304よりモリブデンを含み、耐孔食性を高めたオーステナイト系の鋼種で、海沿いの建材や薬品を扱う設備でよく採用されます。ただし「塩分環境ならSUS316で万全」というわけではありません。海水への常時接触や高濃度の塩化物環境では、SUS316でも腐食する可能性があり、条件によってはさらに耐食性の高い鋼種や二相系を検討する必要があります。

一方、包丁やハサミに使われるマルテンサイト系(SUS410、SUS420など)は、焼入れで硬くできる代わりに炭素量が多く、耐食性はオーステナイト系に劣ります。ステンレス製の包丁でも「使ったら拭いてください」と言われるのは、この特性によるものです。

選定で迷ったときは、まず使用環境を整理してみてください。屋内か屋外か、塩分や薬品に触れるか、水が滞留する形状か。ここが決まれば、必要な鋼種の水準はおのずと絞れます。使用環境に合わない鋼種を選ぶと、早期の腐食や部材の交換につながる可能性があり、材料費の差以上の費用がかかることも珍しくありません。

出典:種類|ステンレス協会

 

まとめ:ステンレスは「正しく選び、手入れすれば錆びにくさを保てる」

ステンレスが錆びにくいのは、クロムがつくる不動態皮膜が鉄を守っているからです。この膜は極めて薄く、傷ついても酸素があれば自ら再生します。ただし、鉄粉が付着したり、塩化物イオンに局部的に破られたり、酸素の届かない隙間ができたりすると、再生が追いつかず錆が現れます。

対策はいたってシンプルで、水分と塩分を残さない、濡れた鉄製品を長く接触させない、屋外のものは定期的に洗い流す。この三つで日常の錆のリスクは大きく減らせます。錆が出てしまっても、しみ程度の初期であれば市販の清掃剤で戻せる場合が多いため、早めに手を打つことが結局は一番の近道です。そして、環境に合った鋼種を最初に選んでおくことが、もっとも効果の大きい錆対策になります。

株式会社ハタメタルワークスは1935年の創業以来、銅を中心とした金属加工を専門に手がけてきました。ステンレスをはじめとする各種金属の加工や、使用環境に応じた材料選定のご相談にも対応しています。「この環境ならどの材質がよいか」「溶接後の処理をどうすべきか」といった段階からでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。

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監修者情報
代表取締役 畑 敬三
不動産売却と不動産買取の専門店日本橋ホーム株式会社 株式会社ハタメタルワークスは、産業用電池や車輌機器向けの「銅加工」を専門とし、昭和10年の創業以来「誠実な対応」と「確かな製品」で信頼を築いてきました。迅速な対応により最短翌日納品が可能で、小ロットにも対応します。「小さな一流企業」を目指し、「銅加工ならハタメタルワークス」と評価されるまで成長。今後も独自の価値を提供し続けます。 詳しくはこちら

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